続・鄙びた村
2015年 09月 26日
そろそろ引き揚げようと、村の入り口のタベルナまで戻ってきたときだった。
50代半ばくらいだろうか、一人の男性とばったり出逢った。
さっぱり人気が無かったのに、まるで湧いて出てきたかのようだ。
島で一番大きな町でさえ東洋人はいないのに、こんな人里離れた村ならなおさら珍しいだろう。
彼は驚いたような、不思議そうな顔をしつつも、話しかけてきた。
「コーヒーでも飲んでいかないか?。俺はコーラを飲むから...」
えーっと...、そのコーラ代を払うのはあなた?、もしかして私に奢れとでも?。
なんとなく胡散臭く感じてしまったので、丁重にお断りしてクルマに戻ることに。
...けれども、このまま村をあとにすると、なんだかとても後悔しそうな...、そんな予感がした。
それに、よく歩いたので喉がカラカラだ。
ペットボトルの水はとっくに飲み干してしまったし。
気がつけば、足は村へと引き返していた。
「やっぱり、飲んでいくことにしたよ♪」
タベルナの椅子に座っていた彼は、待ってましたとばかりにニコリと笑った。
「そうか、それじゃ店の人を呼んでくるからな。そこに座って待ってろ」
木漏れ日の下で小鳥のさえずりを聞きながらのんびりしていると、お店の人らしき娘さんが注文したフラッペ(=ギリシャ式アイスコーヒー)を持ってきてくれた。
少しばかりねじれたグラスに注がれたフラッペと...、もうひとつ何かが乗ったお皿をテーブルに置くと、優しく微笑ながら穏やかな口調でこう言った。
「この村には観光客なんて滅多に来ないから...。どうぞ召し上がってくださいね♪」
お皿の上には美味しそうなケーキ。
もちろん自家製だ。
疲れた身体に、一層その甘さがしみ渡る。
本当に美味しいモノは、ひとくちごとに幸せを感じる。
ニンマリとしながら、ふと顔を上げると...
いつの間にか、周りには何人かの村人たちが。
私がケーキを美味しくいただいている姿が可笑しかったのだろう。
みんなニコニコしながら、こちらを眺めている。
そんな村人たちの様子もまたどこか可笑しく、ほっこりとした気持ちにさせてくれた。
ケーキの差し入れももちろん嬉しかったけれど...
飾らない笑顔で迎えてくれる素朴な温かさが、私は大好きだ。
そんなギリシャ流の「お・も・て・な・し」、フィロクセニア。
鄙びたシエスタの村には、それが色濃く残っている。
たった2ユーロのフラッペに
美味しいケーキと温かい笑顔が付いてくる
みんな本当に穏やかだ
にほんブログ村
by photographerasuha
| 2015-09-26 23:56