小学校に入学すると、卒業するまでまる6年かかる。
子供にとって6年という時間は、途方も無い長さに感じたものだった。
ところが大人になるにつれ、それはどんどん短くなってしまった。
全く同じ長さのはずなのに、不思議なものだ。
今年、あるシエスタの村を6年ぶりに訪れた。
その昔、島で一番栄えていたという町は、時の流れとともに鄙びた村へと姿を変えた。
今は特に何があるわけではなく、ただ静かで枯れた雰囲気の、時間さえもがシエスタを楽しんでいるかのような素朴な集落だ。
島のほぼ全体を見渡すことができる丘の上に築かれた要塞は、過去の繁栄を思い描くのが難しいほどに朽ち果てている。
村の中にはカフェが1軒と、土産物を扱う小さな商店が2〜3軒ほどしかない。
ただ、それらでさえ、いつも営業しているとは限らなかった。
ごく稀に、クルーズ船の観光客がグループ・ツアーで立ち寄ることはあった。
けれど、ぐるっと一回り歩くと、そそくさと次の場所へと移動してしまう。
一行が去ってしまうと、あとはエーゲ海からの風がオリーブの葉を撫でてゆく音しか聞こえなかった。
ところが...である。
今回はどうも様子が違う。
村の入り口のバス停には、観光客らしき人だかりができている。
それも、ほぼ全てが東洋人だ。
村の奥へと入って行くと、どの路地にも観光客の姿がある。
以前は人影はもちろん、ネコでさえ滅多に見かけないほどだったのに。
エーゲ海からの風は、あちこちから賑やかな話し声を運んでくる。
カフェの店先には、漢字一色で書かれた大きなメニュー。
土産物屋には「歓迎」の文字。
どの店も、中国人観光客でいっぱいだ。
ギリシャは彼の国ではとても人気のある旅行先で、年々その数は目に見えて増えていた。
けれど、まさかこんな村にまで押し寄せるようになるとは...。
驚きとともに、勢いや逞しさを感じた。
もっとも日本人だって、かつてバブル経済に沸いた時代に海外旅行が身近なものになった時には、きっと同じような状況だったことだろう。
それまで日本人なんて見かけることが無かった場所に急に現れるようになって、土地の人々を驚かせたかもしれない。
今はその順番が中国に回った...ということだろう。
それにしても、6年。
蝉の幼虫が地中で過ごしている間に、世の中は大きく変わってしまった。
時の流れは恐ろしいほどに速い。
そして、これからはさらに加速するのかも...?。
枯れた村には時の流れが創り出した美しさがある
ところが、鏡に映った自分はというと...
ああっ、憂鬱...
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by photographerasuha
| 2015-12-09 01:39